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溢れる感情を止めることが出来ないワンカット映画「1917命をかけた伝令」感想

2020年2月14日に公開、映画「1917 命をかけた伝令」。

ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞し、アカデミー賞も騒がせるサム・メンデス監督の最高傑作との呼び声が多いこの作品は痛ましくて、悲しくて、怖くて、胸が張り裂けそうになっても前に進み続けた兵士を描いた戦争映画の決定版でした。

 

様々な感情が入り乱れる戦場を疾走感のある映像で描いた戦争映画

もともとは生い茂っていた植物も踏み荒らされて、今では植物は無く人や馬の死体が至るところに転がっている。その沼には鳥やドブネズミが群がり、臭気漂う腐ったと化している。大量に転がる大砲の薬莢。敵軍の塹壕に仕掛けられたブービートラップ。人気の無い廃墟とした町ではどこにスナイパーがいるかわからない。

『死』がこんなにも近くにある。これが地獄。これが戦場である。

海外で公開された直後から大きな話題になり、ゴールデングローブでは作品賞と監督賞を2冠で受賞するなど大きな話題になりました。

この映画はグレート・ウォーと呼ばれる第一次世界大戦が舞台です。

そんな地獄のような状況の中を1600人の命を救うために戦場の最前線まで伝令を届けるために走り続ける姿を描いたのがこの映画です。

待ちに待った日本公開。早速劇場へ足を運びました。

この映画は・・・すごい。

生きている主人公たち兵士のすぐ隣には“あの世”が手招きしている。

この世とあの世の境界線が曖昧になるような悲惨な状況の中を、主人公は1600人の命を救うために何度挫けようとも走り続けます。

その姿は痛ましく、虚しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうになって。

そして気づけば、主人公と一緒に必死に並走してしまっている自分がいました。

それほどまでの没入感を作り上げたのは« 全編ワンカット »で作り上げられた疾走感のある映像が大きな要素だったと思います。

 

今年2020年はアカデミー賞をこの作品と争った話題の「パラサイト半地下の家族」から「フォードvsフェラーリ」「ジョジョ・ラビット」「リチャード・ジュエル」など。1月から素晴らしい作品が目白押しです!

それ以降も「スキャンダル」「ジュディ虹の彼方に」「TENET テネット」など、期待作の公開も控えています。

“2020年代”という新しい年代の幕開けを祝福するような映画のラッシュの中でもこの作品は一際強い輝きを残し続けると思います。

今回はそんな「1917命をかけた伝令」のあらすじ・見どころ・感想をネタバレなしのレビューでご紹介させていただきます!

 

第92回 アカデミー賞
視覚効果賞|撮影賞|録音賞 受賞
第77回 ゴールデングローブ賞(ドラマ)
最高賞 作品賞|監督賞 受賞

この映画をオススメしたい人

・心臓を限界までドキドキさせたい人
・今までに観たことのないスペシャルな映画体験を欲している人
・何度打ち砕かれても前に進む活力が欲しい人
に特におすすめしたい映画です!

予告編・あらすじ

www.youtube.com

第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙(たいじ)する中、イギリス軍兵士のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた。シネマトゥデイより引用

スタッフ・キャスト

スタッフ

【製作】2019年製作 アメリカ

【原題】1917

【監督】サム・メンデス
代表作:「アメリカン・ビューティー」「007 スカイフォール」「007 スペクター」など

【脚本】サム・メンデス|クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

【撮影】ロジャー・ディーキンス
代表作:「ショーシャンクの空に」「ブレードランナー2049」「007 スカイフォール」など

【編集】リー・スミス
代表作:「ダンケルク」「007 スペクター」「インターステラー」など

【音楽】トーマス・ニューマン
代表作:「グリーンマイル」「アメリカン・ビューティー」「007 スペクター」など

キャスト

スコフィールド上等兵:ジョージ・マッケイ(「はじまりへの旅」「マローボーン家の掟」などに出演)

物静かな20代前半の兵士。ブレイクより1年早く入隊し、多くの兵士が犠牲になった「ティプヴァルの戦い」を経験している。故郷に残した家族を想いながら、重要な任務のために命をかけた伝令に出る。

ブレイク上等兵:ディーン=チャールズ・チャップマン(「ゲーム・オブ・スローンズ」「カセットテープ・ダイアリーズ」「キング」などに出演)

地方出身の優しい性格をした10代後半の兵士。前線に参加できるならどんな任務でも引き受けようとするエネルギッシュな青年だが、戦場での経験はほとんどない。スコフィールドと2人1組で伝令の任務を受ける。

その他キャスト

マーク・ストロング アンドリュー・スコット クレア・デュバーク リチャード・マッデン コリン・ファース ベネディクト・カンバーバッチ

おすすめポイント

ここからはこの映画をもっと楽しんで貰えるようにネタバレ無しのレビューでご紹介させていただきます!
観る前に見どころポイントを予備知識として入れて鑑賞しましょう!

映画「1917命をかけた伝令」の映画ポスターです。|作品ポスター・画像 (C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.より引用
作品ポスター・画像 (C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.より引用

① 走り出したら止まらない。驚異のワンカットムービー

はじめに誤解がないようにお断りしておくが、この映画は全編ワンカットではありません

それぞれのシーンをワンカットで撮影し、それを編集で完璧につなぎ合わせることによって『全編ワンカットに見える映画』になっています。

(本当に全編ワンカットの戦争映画を撮るなんて不可能ですよね。笑)

しかし、そこには
スピード、明るさ、天候、物の配置、役者たちの服装やメイクに至るまでのすべての要素で次のシーンにどう繋がっているのかを理解しながら撮影をする必要があり、非常に難易度の高い撮影をロジャー・ディーキンスと監督が作り上げたのが本作です。

全編本当のワンカットで無いにしても、その時点で狂気の沙汰であると私は思いました。

そこまでしてこの物語をワンカットにすることにこだわったのは「この物語がリアルタイムであるべきだ」という強い監督の想いがあったからです。

その結果できあがった映像の没入感は半端ではないです。

ワンカットですが、緊張と緩和が繰り返しに展開する凝縮された内容になっていてフッと力が抜けるとまた緊張の糸が張り詰めたように死の恐怖に襲われる。

この緩急の付け方が素晴らしく、観ている人は主人公たちが息づく戦場へ放り込まれたかのような感覚を味わうことが出来ます。

 

緩急の付け方には音楽も一役買っています。

音楽を作ったトーマス・ニューマンはジェットコースターのようなこの映像を作り上げるのに無くてはならない“音”で見事な援護をしています。そして、ワンカットに編集したリー・スミスも見事です。

これほどまでの没入感を作り上げるにはそれぞれの分野のスペシャリストが揃ったというだけではなく、サム・メンデス作品に関わりが濃いメンバーだからこそ映像・音楽・編集の三位一体を実現させたんだと思いました。

映画はここまで進化したんだ!!とCGを使わないこの映画で感じるのは不思議なことですが、私は感動しました。

彼らにしか作れない« 全編ワンカットに見える戦争映画 »をたくさんの人に味わっていただきたいです。

特に、映画を普段観ない人にこそ、この作品を観て驚きと感動を味わってほしいと思います。

② 死の臭気漂う地獄の戦場を駆けろ。

この物語は1600人の命を救うために本部から最前線にいる部隊まで命がけで伝令を届ける2人の兵士を描いた作品です。

ここでのポイントは戦場の中の安全域から最前線へ。端から端までの全てを主人公は経験するということです。

この物語の舞台である第一次世界大戦というのは初めての世界的な国家総力戦として知られていますが、一方で戦闘にテクノロジーが用いられた戦いであることも知られています。

毒ガス、戦車、戦闘機、マシンガンなどがここで使われました。

前の時代で使われていた馬や塹壕や剣なども使われていましたが、それまでの戦いからの変化を称して『マシンガン・ウォー』とも呼ばれています。その戦場で起こる全てを主人公は目にすることになります。

当時は兵器のテクノロジーは発達してきてましたが、無線が発達していなかったので戦場で伝達を行うときは伝令を走らせることが最も確実性の高い方法でした。

そこで1600人が突撃する明朝までに作戦中止の命令を最前線まで届けるのが主人公の任務です。

 

途中で出てくる無人地帯(ノーマンズランド)と呼ばれる場所は
戦闘が行われた後にできる開けた場所のことを指します。そこでは“腐った死の沼”という呼び方がふさわしい地獄のような景色が広がっていて、至るところに人や馬が転がってハエがたかっています。

ふと横を見ると死者と目があってゾッとするシーンがこの世とあの世の距離をグッと近づけます。

ノーマンズランドでは撤退後に残した敵のスナイパーが主人公たちのように伝令に行く兵士を待ち構えています。

そんな生と死の距離が近く、いつあの世に行っても不思議ではない恐怖の中を主人公は走り続けます。

それから最前線に近づくにつれて、どんどん危険な状況になっていく・・・・。

道中、何度も何度も悲しい出来事や危険な出来事に遭いながらも、諦めずに走り続ける主人公の姿を観ているうちにいつの間にか並走してしまっている自分に気づくことでしょう。

戦争の悲惨さを主人公と一緒に体験することになる私達はたくさんのことを感じるはずです。それこそが監督がこの作品に込めたメッセージだと思います。

③ ここまでしてサム・メンデス監督が伝えたかったもの

前代未聞の撮影方法で作られた物語の中で監督が伝えたかったのは『反戦』なんだと思います。

ネタバレになるので物語の内容には触れられませんが、主人公のスコフィールドはありとあらゆる世界の地獄を凝縮したような出来事が次々と降りかかります。

それでも前に進む彼の目的は『1600人の命を救う』こと。

彼にも故郷には愛する家族がいて、こんな危険な任務をなぜ引き受けてしまったのか。なぜ自分が選ばれたのか。と自問自答しながらも彼は止まらずに進みます。

でもそれはスコフィールドだけが特別なんじゃありません。

それは敵も味方も関係なく、この戦場にいる全ての兵士たちもスコフィールドと同じように、様々なものを背負ってこの戦場で命をかけて戦っています。

みんな本当は故郷に帰りたい。

みんな本当は愛する家族を抱きしめたい。

みんな本当は戦いたくない。

誰もが戦いたくない。

と思っているんだとこの映画を観て思いました。

誰もが望んだわけではなく始まってしまった「戦争」という出来事がこんなにも愚かなものなのか。とこの作品を観ると悲しくなります。

それでも

任務のため、友人のため、1600人の兵士のため、家族のためにスコフィールドは走り続けます!

その何度悲劇に遭っても、悲しみの連続の中で進み続ける彼の姿からは強い勇気をもらえます。

戦争という悲しみ。それでも前に進むことの大切さ。

この映画はたくさんの大切なことを教えてくれると思います。

そこに祖父が第一次世界大戦を経験した話を聞いてこの作品を作ろうと決めて、不可能と思われる撮影を成功させたサム・メンデス監督の“覚悟”が見えた気がします。

おわりに

この作品を観終わって、偶然だけどこの映画が第一次世界大戦という戦場をテーマに作られて良かったと思いました。

馬に乗って突撃していたそれまでの戦争から戦車や戦闘機などのテクノロジーの戦争へと移り変わるきっかけになったこの戦争はその後の戦場と比べるとシンプルな戦いです。

だからこそ、『伝令を届けるために命がけで走る』と一言で表せるシンプルなストーリーマッチして、それを彩る映像や音楽を含む演出が最大限に生きたのでは無いでしょうか。

そこで表現されている『反戦』というテーマもストレートに伝わってくるのはそれが理由かもしれません。

 

悲惨で地獄のような映像が続く内容ではありますが、ところどころにフッと美しさを感じるような幻想的な映像が差し込まれるのもサム・メンデス作品らしくて印象的でした。光の陰影などを利用した演出がほんとに上手いですね!

戦場の中で息づく人々の“希望”と、一寸先は闇という“絶望”という両面を一つの戦場に詰め込んだようなこの作品は戦争映画の中でも特別な作品だと思います。

そして、ワンカットの映像による止まることの無い疾走感がそれを立ち止まって考えさせる隙さえも与えずに、どんどんと前に進んでいくので一気に頭の中にいろいろな情報が入ってきます。

映画史上でも類を見ないほどの没入感を体感した人はこの映画を観終わった時にはぐったりとしてしまうでしょう。

それほど戦争というものは重いということなのかもしれません。

今の平和な世の中でも世界のどこかでは争っている国があって命を落としている人がいます。

平和な現代に生きる私達だからこそ、この映画を今見る意味があるんじゃないでしょうか。

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作品ポスター・画像 (C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.