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見過ごすことができないラストに衝撃を受ける映画「ブラック・クランズマン」

2019年3月22日に公開、映画「ブラック・クランズマン」。

名俳優デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デビッド・ワシントンと話題のアダム・ドライバーを主演に迎え、メッセージ性の強い作品を作ることで有名なスパイク・リー監督が世に送り出したこの作品は映画現代の目を背けてはならない問題を炙り出す監督らしい作品でした。

 

黒人差別というアメリカの根深い社会問題に切り込む

2019年に開催された第91回アカデミー賞の作品賞にノミネートされた作品は本作を含む8本でした。

この中で同じ『人種差別問題』を取り上げていた映画が2つあります。

ひとつはピーター・ファレリー監督作「グリーンブック」

もうひとつがこの「ブラック・クランズマン」です。

同じ作品賞を争った末に「グリーンブック」が受賞して大きな話題になりましたが、同じテーマなのにこの2つは全く違う描き方をしている作品であることを知っていただきたいです。
(グリーンブックも素晴らしい映画ですね!)

差別問題を踏まえながらポジティブな描き方をした「グリーンブック」に対して、この映画は問題を痛烈にえぐり出した映画だと思いました。

これぞ「マルコムX」など、黒人差別を世界に伝え続けてきたスパイク・リー監督だからこそ描ける映画です。

白人が作った人種差別映画と黒人が作った人種差別映画という解釈をする人もいるかもしれません。まさに表と裏。

そういう意味で言うとこの2つは真逆に位置する映画でしょう。

感動できるストーリーは「グリーンブック」

問題定義としては「ブラック・クランズマン」

が優れていると私は思います。

コメディ調で進むこの映画がラストにこんなにズッシリと重くくる映画だとは観る前は想像もしていませんでした。あまりに生々しく描かれる、その演出には監督の覚悟を観たような気がしました。

そして、この物語が実話が基になっていることを最後まで忘れてはいけません。

早速、映画館に足を運んできましたのであらすじ・キャスト・感想などをまとめて【ネタバレなし】のレビューでご紹介させていただきます。

第91回 アカデミー賞
脚本賞 受賞
第71回 カンヌ国際映画祭
審査員特別グランプリ 受賞

この映画をオススメしたい人

・ブラックなジョークで笑いを取るのが好きな人
・映画「グリーンブック」で二人の旅に感動した人
・普段ケンドリック・ラマーとか2pacとかを聞いている人
に特におすすめしたい映画です!

予告編・あらすじ

www.youtube.com

アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署に、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、捜査のために電話で白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)のメンバー募集に応募する。黒人であることを隠して差別発言をまくし立てた彼は、入会のための面接に進み、彼の代わりに白人の同僚刑事フリップ・ジマーマン(アダム・ドライヴァー)が面接に向かう。
シネマトゥデイより引用

スタッフ・キャスト

スタッフ

【製作】2018年製作 アメリカ

【原題】BlacKkKlansman

【監督】スパイク・リー
代表作:「マルコムX」「ドゥ・ザ・ライト・シング」「ジャングル・フィーバー」など

【製作】ジョーダン・ピール
代表作:「ゲット・アウト」「アス」など

【音楽】テレンス・ブランチャード

キャスト

ロン・ストールワース: ジョン・デビッド・ワシントン(クリストファー・ノーラン最新作「テネット」に出演予定)

コロラド・スプリングスの警察署に初の黒人として配属された彼は白人警官の同僚から差別的な嫌がらせを受けていた。そんな中、秘密結社の募集広告を見かけた彼は白人になりすまして面接までこぎつけることに成功。現地にはいけないので同僚のフリップと協力して秘密組織に潜入する。

(彼は同監督作「マルコムX」で主演を努めたデンゼル・ワシントンの息子であり、今作の主演を務めたというのはなにか運命を感じますね!)

フリップ・ジマーマン: アダム・ドライバー(「マリッジ・ストーリー」「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」などに出演)

秘密結社のメンバーと直接会えないロンの代わりに、彼の“フリ”をして直接組織に潜入することになる同僚刑事。電話ではロンが、対面では彼が、という具合に2人で1人を演じながら謎に包まれた組織の内部へと入り込んでいく。

その他キャスト

ローラ・ハリアー トファー・グレイス ヤスペル・ペーコネン コーリー・ホーキンズ ライアン・エッゴールド マイケル・ジョセフ・ブシェーミ ポール・ウォルター・ハウザー アシュリー・アトキンソン

おすすめポイント

ここからはこの映画をもっと楽しんで貰えるようにネタバレ無しのレビューでご紹介させていただきます!
観る前に見どころポイントを予備知識として入れて鑑賞しましょう!

映画「ブラック・クランズマン」の映画ポスターです。|作品ポスター・画像 (C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.より引用
作品ポスター・画像 (C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.より引用

① 面白い!でも衝撃を受ける凄い脚本

社会問題を取り上げた今作ですが、ラストまでの物語はすっごく面白いです!

潜入する秘密結社はKKKと言って当時大きなチカラを持っていた白人至上主義団体です。

彼らは白いシーツを頭巾のように被って馬に乗って、黒人の人が住む家に火を付けたりと過激な活動をしている団体です。他の映画でもそういったシーンを観たことがある人が多いんじゃないでしょうか。

今作の舞台である1970年代のアメリカは差別の色が今よりもずっと濃くて、KKKは手を付けられないくらいの力を持って政治家や警察などと繋がっていたと言われています。

そんな謎に満ちている秘密組織に黒人のロンとユダヤ人のフリップが2人1役で潜入するという嘘のような本当に起こった話を映画化したのがこの作品です。

電話口ではロンが白人のふりをして黒人のことをネタにしてブラックジョークを飛ばしたり、差別的な発言をしたりして話を合わせていますが、黒人は団体に入ることができないので現地に足を運ぶのはフリップというこの前代未聞のコンビが謎を解き明かしていきます。

そんな不思議なコンビが秘密組織に潜入していく様子がとてもコミカルにコメディタッチで描かれているのが印象的でした!

 

それもそのはず。この映画ができる前、
監督に制作陣に参加しているジョーダン・ピールが原作を渡したとき、彼は「目の見えない黒人が自分を白人だと勘違いしてうっかり秘密結社に加入してしまうコメディ」だと思っていたそうです!

しかも「笑える映画に仕上げてね」とだけ伝えて、監督が試行錯誤の末に完成させたのがこの映画だったというので驚きですね!

「黒人の警察官がKKKに潜入するってストーリーが面白そう!」と思ってこの映画を観た人も多いんじゃないでしょうか。実は私もそのクチです。

 

キャラクターの濃い登場人物たちが作るコミカルな展開に映画館の中でも笑いが起こっているくらい、和気あいあいとした空気のなかで物語が進んでいきます。

しかし、中盤くらいからラストに向かっての間は「あれ、なにかおかしいぞ。」という空気に変わったのが印象的でした。

そしてラストシーンを観たときに強い衝撃とともに「あれはそういうことだったのか!」と、スパイク・リー監督が物語の中に散りばめていたメッセージのピースが頭の中で完成するはずです。

「あ!この映画は実話だったことを忘れてた!」

と誰もが思うそのラストに向かって徐々にメッセージが熱を帯びていくこの映画の脚本には感服しました。

 

『黒人差別』について名作を送り出してきた監督がしばらくの間、そういった映画を作ってこなかった中でこの脚本の内容は“完全復活”を印象付ける決定的な作品になったと思います。

そして、この映画をたくさんの人が知ってほしい。と思える、今見るべき映画だと私は思いました。

② デンゼルの息子と原作との違いについて

デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デビッド・ワシントン

父親デンゼルは幼少期に差別の色濃かった時代を経験して育ち、俳優になった人です。

彼が俳優になった当時は、エディ・マーフィーが流行っていたりと映画の中での黒人は“お笑い役”の印象を持たれていました。そんな黒人をバカにしているようなイメージを覆してきたのがデンゼル・ワシントンなのです。

また、この映画のスパイク・リー監督も人種差別と戦ってきたひとりです。

彼が描いた初期の作品は黒人蔑視に対するメッセージを色濃く反映した映画が多く、社会派映画監督としても有名ですね。

そんな監督とデンゼルがタッグを組んだのが名作「マルコムX」です。

このあたりからデンゼルの社会派俳優のイメージは決定付けられました。

そんな映画の世界から世の中を変えようとしたデンゼルの息子ジョン・デビッドワシントンがスパイク・リー監督とタッグを組んで実在した人物を映画化したというのが非常に感慨深いです。

(実は「マルコムX」に9歳のジョンが出演しています!運命的なものを感じますね!)

そういった背景を知ってこの映画を見ると、見え方が少し変わってくるかもしれません。

ジョンはクリストファー・ノーラン最新作「TENET テネット」の公開が控えていて、2020年を代表する映画の一つになるであろう!という予感がしています。楽しみですね!

原作との唯一の違い

この物語は実在した人物ロン・ストールワースの自伝小説「ブラッククランズマン」を映画化したものです。

その中で調べてみると原作と違う点があることに気づきました。

それは相棒フリップの人種です。

原作では人種については触れられておらず、フリップが白人であること以外は書かれていないそうです。

しかし、この映画の中ではフリップはユダヤ人の設定になっています。

これは「なぜ白人が黒人の代わりに潜入するのか?」という動機の薄さを感じさせないための演出だと解釈しました。

フリップをユダヤ人の設定にする上で生きてくるのが

・フリップがユダヤ人であることを自覚してロンと想いを共有するという部分
・もし組織の人間にユダヤ人だとバレてしまうと殺されかねないという緊張感

です。

この設定の変更を原作に加えて、重要な演出を追加したところにもベテラン監督としての威厳を魅せつけられたように思いました。

③ ラストに実話であることを思い知らされる

この作品ははじめからコメディタッチでコミカルに進んでいきます。

しかし、ラストに向かっていくにつれて『差別問題』へのメッセージ性が加熱されていきます。

笑いが起こっていた劇場が静まり返った水面のように静止してしまうほど強烈で衝撃的なラストシーンを観た人はロンたちがKKKに潜入していた時代から今もなお、アメリカに根強く息づいている問題の深刻さに気づくことでしょう。

そこで黒人と白人のコンビが二人一役で組織に潜入する“嘘みたいな本当の話”が“本当の話”に変化します。

これぞ監督が描きたかったメッセージであり、現代を生きている私達はその問題を直視しないといけません。

ラストのシーンの内容についてはネタバレになってしまうので触れられませんが、ネタバレにならない程度にこの映画のポイントになる演出について触れたいと思います。

 

ロンとフリップが潜入を始めた時に街ではブラックパンサー党の黒人民族主義運動・黒人解放闘争が繰り広げられていました。

(ブラックパンサー党というのは名作「フォレストガンプ一期一会」の後半にも登場したあの集団です)

過激な活動を展開するブラックパンサー党のスローガンは「ブラックパワー」

黒人への迫害を勧めていくKKKのスローガンは「ホワイトパワー」

このブラックとホワイトという相反する過激な団体同士の戦いの炎が燃え盛っていたのが当時の時代背景としてあります。

集会で「ブラックパワー!ブラックパワー!」と叫ぶ別の場所で「ホワイトパワー!ホワイトパワー!」と叫んでいる姿が映し出され、はっきりとした対比になって描かれているシーンが印象的でした。

それとリンクするようにロンとフリップの潜入激も架橋へと突入していきます。

この後半での熱量の高まり具合と共に高まっていく緊張感を忘れることができません。

 

そして「アメリカファースト」という発言。

これはKKKのリーダーデュークが集会で発した言葉ですが、これはトランプ大統領が選挙時に使いまわしていたセリフでもあります。

(オバマ大統領の「イエス、ウィーキャン」と同様に、大統領がスローガンとして掲げていた言葉です。)

トランプ大統領の言う意味は「アメリカを強い国にしよう!(アメリカ第一主義)」ということでしたが、この映画の中でデュークが発した意味は「白人第一主義」という意味でした。

この演出はこの言葉に対しての監督のメッセージだと思います。

黒人差別と戦い続けてきた監督だからこそ、この演出は特別な意味を持ちます。

 

そして、なぜ、こんな演出が盛り込まれているのか?ということをラストシーンで思い知ることになるでしょう。

観る前と観たあとでは全く印象が変わる映画でありながら、社会に対しての警笛を攻撃的に表した作品でもこの「ブラック・クランズマン」はあると思います。

この映画が現代社会が抱える深刻な問題についてたくさんの人が考えを巡らせるひとつのきっかけになることを私も祈ります。

おわりに

ブラックコメディの中にこれほどまでに伝えたいメッセージを生々しく、そして荒々しく映画に収めたスパイク・リーの熱量と覚悟に拍手を送りたいです。

ブラックジョークのコメディ映画という側面と、実際に起こっていることというリアルな映画という側面を持つこの「ブラック・クランズマン」

カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを取るだけあるパワフルな映画でした。

また、アカデミー賞授賞式で「グリーンブック」の作品賞受賞の際に、スパイク・リーが席を立って退場しようとした話が話題になりましたがそこでも現代に『差別問題』が今でも色濃く残っていると感じさせられました。

気になる人は調べてみてください!

この映画をまだ観ていない人は一度観てみてはいかがでしょうか?

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映画「マリッジ・ストーリー」の映画ポスターです。|(C)Heyday Films, Netflix マリッジストーリーより引用

 

作品ポスター・画像 (C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.