
主演女優賞 受賞
最湯集主演女優賞 受賞
映画「ジュディ 虹の彼方に」の基本情報
あらすじ
ミュージカル映画のスターだったジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)は、遅刻や無断欠勤を重ねた結果、映画のオファーがなくなる。借金が増え続け、巡業ショーで生計を立てる毎日を送っていた彼女は、1968年、子供たちと幸せに暮らすためにイギリスのロンドン公演に全てを懸ける思いで挑む。(シネマトゥデイより引用)
スタッフ
【製作】2019年製作 イギリス
【原題】Judy
【監督】ルパート・グルート
代表作:「嘆きの王冠 ホロウ・クラウン リチャード二世」など
【美術】ケイブ・クイン
代表作:「ティーンスピリット」「ダイアナ」「トレインスポッティング」など
【衣装】ジャイニー・テマイム
代表作:「パッセンジャー」「007スカイフォール」「ハリーポッターシリーズ」など
【音楽】ガブリエル・ヤーレ
代表作:「ディリリとパリの時間旅行」「ベティ・ブルー」「トロイ」など
キャスト
ジュディ・ガーランド:レネー・ゼルウィガー(「ブリジット。ジョーンズの日記」「シカゴ」などに出演)
1922年に生まれ1969年に47歳でその生涯に幕を閉じた伝説の女優。抜群の歌唱力で「オズの魔法使い」のドロシー役で世界的なスターになるが、その後ドラッグとアルコールからの依存から抜け出せず、壮絶な人生をたどる。

ちなみに、レネーはジュディが亡くなった47歳。同い年でブランクがある彼女はジュディと重なる部分を感じてたのかもしれませんね。
その他キャスト
ジェシー・バックリー フィン・ウィットロック ルーファス・シーウェル マイケル・ガンボン
ネタバレなし感想レビュー
ここからはこの映画をもっと楽しんで貰えるようにネタバレ無しのレビューでご紹介させていただきます。観るか悩んでいる方に特に読んでいただきたいです!
レネー・ゼルウィガーの絶唱が観る人の心を震わせる
この作品はポップなミュージカル映画ではなく、
ジュディ・ガーランドという壮絶な人生を歩んだ女優の晩年を描いた映画です。
そのジュディを圧巻の演技で演じきり、オスカーでもゴールデングローブでも女優賞を受賞したレニー・ゼルウィガーの演技がすごいというか、凄まじいです。
(この映画を深く楽しむためには欠かせない彼女の生涯については後でご紹介します!)
レネーは「撮影に向かう車の助手席にジュディが座っている気がした」と話しているほど、長期間にわたり歌い方にクセがある本人の歌唱法を完璧にマスターし、
歌っている時以外にも、人の話を聞く時に相手を覗き込む仕草や、丸まった背中など。本人が憑依したかのようなすごい演技を見せてくれました。
実際のジュディとレネーの顔は全然似ていないのですが、
仕草や表情、歌い方に至るまでがそっくり過ぎて、ジュディが憑依しているかのような演技です。
この演技は映画「ジョーカー」のホアキン・フェニックスを個人的には上回るほど、迫力満点でした。
そして、特筆すべきポイントはジュディ独特の絶唱とも呼ばれる歌唱法です。
大きく叫んでいるような歌い方をしたと思えば、次の瞬間には囁くように歌い上げる彼女の歌い方は聞く人の心をグッと掴むほどの魅力を持っています。
そんな女優として、歌手として世界的にブレイクしたジュディ・ガーランドの明るい部分の裏側には影の部分がありました。
それは
5度の結婚、4度の離婚。ドラッグ・アルコールに溺れる日々。うつ病。自殺未遂。借金まみれでホテルを追い出され、寝所はパーティ会場。
それは『オズの魔法使い』のドロシー役でブレイクした彼女が“ 商品として ”芸能界に使われた結果だともいえます。
しかし、彼女の歌の才能はピカイチです。
ステージに上った彼女は自身に溢れ、力強く歌い、聞く人へ感動を届けます。
そんな光の部分と闇の部分の両方を持ち合わせているジュディ・ガーランドに見事になりきったレネーは本当に素晴らしい。
この映画はジュディの壮絶な人生と彼女の魅力に思いを馳せると同時に、レネーの圧倒的なまでの演技にうっとりする映画でもあります。
女優として、母親として。1人の人生の中で最高の光も最悪の闇の世界も見て47歳でその生涯を閉じたレネーの人生について振り返り、この映画の感動をより深く味わいましょう。
今も歌われ続けるジュディガーランドの短い生涯を知る
ところで、
みなさんはジュディ・ガーランドという女優を知っていますか?
この映画で彼女の存在を初めて知るのもいいですが、
彼女の生涯について知ってこの映画を観ることでこの映画がもっと楽しめると思います!
なぜなら、この作品の中で語られる部分と語られない部分があるからです。
ここでは彼女の生涯についておさらいして、この映画をより一層深く理解できるように予備知識を入れましょう!
2歳半で芸能界に入り10代には世界的スターへ
1922年生まれ。2歳半で舞台にデビューした彼女は10代で映画会社のオーディションに合格する。
当初からのびのびと歌う歌唱法を確立していき、歌の才能に満ち溢れた少女だった。
その後、後世に語り継がれる永遠の名作『オズの魔法使い』の主役ドロシーとして大ブレイク。
彼女がその中で歌う『オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)』は伝説のミュージカルソングになり、今も歌わ続けている。
しかし、そういった光の部分の歌には大きな闇もある。
ジュディは太りやすい体質だった。事務所が太らさないように、そして長い時間仕事をできるように減量効果と興奮効果がある興奮剤と睡眠薬を交互に与え続けたのだ。
その後、ジュディは過剰なアルコールも加わり、精神を病んでしまう。
そんな彼女の光と闇の両方に焦点を当てたのがこの映画「ジュディ 虹の彼方に」である。
徐々に転落し始めるジュディの人生
『オズの魔法使い』以降、素行が悪く業界からのイメージが悪かった彼女は「再起不能」と噂されていながらも名作『スタア誕生』で復活を果たす。15分にも及ぶ大メドレーを歌った彼女は再度、世の中に自分の実力を知らしめた。

大絶賛された彼女だったが、アカデミー賞の受賞を逃してしまう。
それは、彼女のことを快く思っていなかった関係者が裏工作をして受賞を阻止させたといわれている。
人物としては悪いイメージが多かった彼女であったが、歌には大きな評価が寄せられていた。そこで彼女は歌を中心にしたライブ活動に専念することになる。
『オズの魔法使い』以降のファンも多く、コンサートのチケットはどこもソールドアウト。
中でも1963〜1964年にアメリカのカーネギーホールで行われたコンサートは「ジュディ生涯最高のパフォーマンス」と言われ、その音源は今でも売れ続けている。
その後、テレビ番組で初のレギュラーを任されるが、視聴率が集まらずに打ち切りになってしまう。そのショックから薬物依存に拍車がかかり、コンサートの調子も大きく上がったり下がったりしはじめるジュディ。
それに加えて少女の頃から芸能界で生き続けてきた彼女の金銭感覚はズレていて、宿泊費を払えずにホテルを追い出されることもよくあった。
そこでギャラ欲しさに引き受けたのがこの映画『ジュディ 虹の彼方に』で描かれるロンドンのナイトクラブで行われた「トーク・オブ・ザ・タウン(1968〜1969)」だった。
晩年のジュディを描いたのがこの作品
「トーク・オブ・ザ・タウン」が始まった当初はかなり好評でファンたちは彼女の歌唱を堪能していた。
しかし、次第にドラッグの量が増えていった彼女は朦朧とした状態でステージにあがり、観客から大きく避難されてしまう。
5人目の夫ミッキーや秘書のロザリンは彼女に振り回されるが彼女を支え続けた。
そしてこのロンドン公演を終えた半年後の1969年6月22日、ジュディはその生涯に幕を閉じてしまう。
10代の頃から危険なクスリに漬けられて仕事をさせられ続けた彼女は、その後もクスリやアルコールに蝕まれ続けて体はボロボロになっていた。47歳という生涯の短さは彼女の運命だったのかもしれない。
最後のコンサートは「命を燃やし尽くすように歌っていた」と言われています。
そんな彼女が逝去するまでの晩年の1年間を描いたのがこの映画です。
4度の結婚5度の再婚。ジュディの夫たち
大人になるごとに情緒不安定になっていったジュディが心の拠り所を求めたのは夫の存在だった。
生涯、5度の結婚と4度の離婚。そして、3人の子供を育てていたということからも彼女の人生が壮絶だったことがわかるだろう。
初めの結婚は19歳のときで相手はデイヴィッド・ローズという作曲家だった。彼とは3年で離婚している。
2番目の夫は彼女が主演を務めた作品の監督ヴィンセン・ミネリ。彼との結婚生活は6年間。
彼との間に生まれた子供ライザ・ミネリも母親同様に女優になり、映画「キャバレー」でスターの座を射止めるが、薬物依存によるカムバックと療養を繰り返している。
3番目の夫はこの映画に登場する、
彼女の復活作「スタア誕生」のプロデューサーやコンサートでも関わりがあったシド・ラフト。
親権問題で争ったが、ホテルを追い出された時に頼るのはシドだったことから、離婚した後も信頼している相手だったと思われる。結婚生活は7年間。
シドとの間に生まれた次女のローラと長男ジョーイもこの映画に登場します。
ローラはおとなになってからショーの世界に入り活躍している。ローラは母のことを「どんなに悪い状況の中でもそれを笑い飛ばすユーモアをいつも忘れなかった」と語っている。
4番目の相手は俳優のマーク・ヘロン。結婚生活わずか1年で別居し、4年後には離婚している。
5番目の夫もこの映画に登場する、ミッキー・ディーンズというディスコの支配人だった。
彼はジュディがその生涯に幕を閉じることで死別するまでわずか3ヶ月の結婚生活の中で彼女を支え続けた。
クスリ漬けの彼女は情緒不安定だったが、子どもたちとの関係は深く、母親として愛されていたことや、彼女が子供たちのことを心から大切に思っていることもこの映画で描かれる。
歌手としてのジュディ。母親としてのジュディ。
レネー・ゼルウィガーがそんなジュディの人生の最後を演じるのがこの『ジュディ 虹の彼方に』です。
その凄惨な人生の晩年を見届けてください。

彼女にとってオーバーザレインボーはどんな曲だったのか
https://twitter.com/alphaflick_/status/1235925739100229632?s=20
彼女が歌う名曲「オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)」は世界のたくさんの人に夢や希望、愛を届けました。
しかし、彼女にとってのこの曲はどんな曲だったんだろうか?
映画を観終わってから、ずっとそのことを考えています。
彼女は2歳半で舞台に出てから普通の女の子の生活をすることが出来ませんでした。
10代の時に『オズの魔法使い』でブレイクしなければ、彼女は普通の女の子として生きていけたはずです。
しかし、彼女の運命はブレイクする道を選びました。
そこから10代の少女の人生は大きく変わります。
彼女を金儲けの道具として働かせ続けた当時の業界人は、長い時間働かせる為にベンゼドリンという薬を投与し続けました。この興奮剤は眠る時間を無くすためのものです。そして、仕事が終わったら睡眠薬で眠らされる。その繰り返しでした。
その生活の中で、彼女は精神を病んでしまいます。うつ病で自殺未遂もしています。

壮絶な人生を歩んだ彼女の生涯でしたが、
彼女はどこまでもまっすぐに歌を通して愛を観客たちに届けたいという想いを大切にしていました。
情緒不安定でステージに上る直前まではボロボロ。
でも、ステージに上って歌唱するジュディは自身に満ち溢れていました。
体が蝕まれていても歌で愛を届け続ける彼女の姿は、とても痛々しいのですが、その歌には心を震わされます。
また、素晴らしい彼女の才能を世界に届けたのは、彼女を薬漬けにした業界人たちであることも事実です。
光と闇の間を行ったり来たりしながら47年の生涯を歩んだジュディの人生を象徴するのが「オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)」です。
彼女にとってのこの曲はどんな曲だったんだろうか?
私にとってこの曲は
彼女を殺した曲でもあり、彼女を輝かせた曲でもあるんじゃないかと思いました。
まとめ
ジュディ・ガーランドという1人の女性が生きた証を
映画という1つの作品を通して私達の心の中に深く打ち込んだような作品です。
この作品の中で歌のシーンの直後には、ジュディの暗い部分が映し出されることも印象的でした。
それはステージの上と下とリンクして上下する彼女の情緒を現していたんだと思います。
また、そんな複雑な役柄を演じきったレネー・ゼルウィガーのジュディを憑依させたような圧巻の演技が無ければ本作は成り立たなかったでしょう。
この作品は観る人によって感じることが様々に分かれると思います。
しかしそれが伝記映画としての成功であるとも思います。
1人の女優が生きた証を通してたくさんの事を感じさせてくれるこの映画。
彼女の「私のことを忘れないでね」とチャーミングに言い放った彼女の姿を僕が忘れることは無いでしょう。
作品ポスター・画像 (C)Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019