2019年12月6日に公開、映画「マリッジ・ストーリー」。
Netflix製作でアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンをW主演に迎えて作り出されたこの映画は夫婦が離婚騒動の中で見失っていた愛に気づく感動の物語でした。
愛ってなに?離婚騒動を通して見失った愛を探す物語
Netflixから公開されるやいなや「これは傑作だ!!」と反響が広がり、劇場公開もされて多くの人の心に優しい愛を伝えたこの映画をご紹介したいと思います。
物語は夫婦の離婚騒動がどんどんと悪い方向に向かっていき、親権を巡って裁判にまで発展してしまうというドロ沼に入ってしまうというお話です。
日本では夫婦の3分の1が離婚し、残りの3分の1は夫婦関係が破綻しているとも言われているほど現代社会にとって深刻な問題である『離婚問題』を生々しく描いた映画でもありながら、
不思議と最後には結婚したくなるという感覚に陥るこの映画は観る人の心の深いところに響く内容になっていると思います。
W主演を努めたアダムドライバーとスカーレットヨハンソンの演技に焦点を当てた演出がこの映画のメッセージをより強く伝えていて、その演技の迫力には圧倒されました。
私はまだ結婚をしたことがありませんが、結婚している人も、まだの人もこの映画の伝えたいことをしっかりと受け取ることができるようになっているのは「フランシス・ハ」「イカとクジラ」などを監督したノア・バームバック監督の手腕と二人の主演の実力と言っても過言ではないでしょう!
アカデミー賞、ゴールデングローブ賞も騒がせて、Netflix制作の映画のチカラを世界に知らしめた本作。
それではこの映画のあらすじ・キャスト・感想などをまとめてネタバレなしのレビューでご紹介させていただきます。
助演女優賞 受賞
助演女優賞 受賞
この映画をオススメしたい人
・愛を見失ってしまった夫婦
・結婚に関心のある人(意外と結婚したくなります)
・思いっきり叫びたくなるほどストレスを抱えている人
に特におすすめしたい映画です!
予告編・あらすじ
女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と監督兼脚本家のチャーリー(アダム・ドライヴァー)は、かわいい息子がいる仲のいい家庭を築いていたが、夫婦の関係は少しずつ悪化していき、離婚を決める。円満な協議離婚を望んでいたが、ため込んできた相手への怒りを爆発させ、負けず嫌いの二人は離婚弁護士を雇って争う。
(シネマトゥデイより引用)
スタッフ・キャスト
スタッフ
【製作】2019年製作 アメリカ
【原題】Marriage Story
【監督】ノア・バームバック
【製作】デビッド・ハイマン ノア・バームバック
【脚本】ノア・バームバック
【音楽】ランディ・ニューマン
キャスト
チャーリー: アダム・ドライバー(「ブラック・クランズマン」「スターウォーズシリーズ」「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」などに出演)
妻と離婚をすることを決めた夫。ニューヨークの小さな劇団を率いている演出家である彼は野心家で才能に溢れており、仕事に熱中するあまり妻とのすれ違いに気づくことができなかった。しかし、妻と息子ヘンリーのことを愛しています。
ニコール: スカーレット・ヨハンソン(「ジョジョ・ラビット」「アベンジャーズシリーズ」などに出演)
離婚をすることを決めた妻。昔は子供向け映画でブレイクした女優だったが、彼と出会ったことで舞台演劇への道へと進みます。10年間夫の劇団で女優を続けていましたが、彼の成功のために犠牲になったと感じてしまい、ついには離婚をすることを決めます。
その他キャスト
ローラ・ダーン アラン・アルダ レイ・リオッタ ジュリー・ハガディ メリット・ウェバー アジー・ロバートソン ウォーレス・ショーン マーサ・ケリー マーク・オブライエン ブルック・ブルーム
おすすめポイント
ここからはこの映画をもっと楽しんで貰えるようにネタバレ無しのレビューでご紹介させていただきます!
観る前に見どころポイントを予備知識として入れて鑑賞しましょう!

① 実は些細なきっかけで離婚に至る。のかもしれない
離婚ってほんとに些細なことのすれ違いがきっかけで、どんどんそのすれ違いが大きくなった結果に起こるんだなあ。
と、しみじみ考えさせられる映画です。
舞台を成功させてどんどん劇団を大きくさせていきたい演出家の夫とその劇団の中で女優として活躍する妻。
そんな二人を周りの人は『理想の夫婦』として暖かく見守っていましたが、実は二人の間には大きくなり過ぎて元には戻せない“すれ違い”がありました。
仕事仕事で家庭のことをおろそかにしてしまった夫ですが妻や子供のことは愛しています。
妻もそんな夫の劇団で活躍しながら家族を愛しています。
なぜ、愛し合っていた二人が離婚することになってしまったのか?
その理由が二人の離婚騒動の中で明らかになっていくドキュメンタリータッチでこの物語は進んでいきます。
はじめは心のすれ違いがきっかけで「もう離婚よ!」となった二人ですが、やがて夫婦喧嘩が親権を争う離婚裁判へと発展していってしまいます。
裁判で闘うのは子供に対する『親権』です。
この映画を観ている人は
些細なすれ違いから離婚に至った二人の溝をこじ開けるようにお互いについた弁護士が争いを激化させていく様子が非常にリアリティを帯びていて、この『離婚』という社会問題の傷深さに気付かされるはずです。
仕事に熱中する夫。孤独感を感じる妻。間に挟まれる子供。
という3人のそれぞれのことを観ている人は「ほんとは愛し合っているのになんでこの人達はそれがわからないんだ!!」とヤキモキした気持ちになるはずです。
ほんとは愛し合っていた二人がなぜ?法廷で争うほどの離婚騒動に発展してしまったのか?
ここにこの映画「マリッジ・ストーリー」が描いているテーマが詰め込まれているように思いました。
そんな社会問題を取り上げながら“夫婦の愛”について気付かされるこの映画のストーリーを是非、たくさんの人に観ていただきたいです。
② アダムとスカヨハの映画史に残る夫婦喧嘩
この映画では映画史に残る夫婦喧嘩シーンが大きな話題になりました!
約10分間に及ぶ長回しの一発撮りで撮影されたそのシーンは凄まじい迫力です。
W主演のアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの“迫真の演技”とも呼べるほどの白熱する喧嘩シーンはまさに圧巻でした。
主演の二人のことを知らない方のために少しご紹介します!
アダム・ドライバーは
「スターウォーズ」のカイロ・レン役、スコセッシ監督の「沈黙 サイレンス」で江戸時代に日本に来た宣教師役、「ブラッククランズマン」の秘密結社に潜入する白人刑事役など、幅広いキャラクターを演じ分けて人気急上昇中の俳優です。
今回は離婚騒動の中の夫役というそれまた今までと全く違った役柄で、普段はクールな夫が感情を爆発させる姿を見事に演じていました!圧巻です。
スカーレット・ヨハンソンは
「アベンジャーズシリーズ」のブラック・ウィドウなどでアクション女優としてのイメージを持っている人も多いかもしれませんが幼少期から女優として活躍している演技派女優でもあります。同じ今年公開の「ジョジョ・ラビット」では作品になくてはならない、重要なジョジョの母親役を演じて観ている人を感動の涙に包み込みました。
そんな彼女は「アクション女優じゃなくて、やっぱり演技が凄いな!!!」と感心させられるほど長セリフの迫力がすごかったです!!
そんな演技の実力が素晴らしいと定評のある二人が10分間も一発撮りで喧嘩のシーンを撮ったら・・・どれだけ迫力があるか少しは伝わりますでしょうか?
主演の二人と別のところに目を向けてみると私はロケーションが気になりました。
引っ越ししたての家具も最低限しか置いていない、生活感の無い部屋の中でこのシーンは繰り広げられます。
普通、夫婦げんかというと生活感のあふれる部屋(お互いの思い出=過去が詰まった部屋)の中で行われるシーンが多いようなイメージを持っていましたが、この映画で喧嘩をしている部屋にはほぼ何もありません。生活感は皆無です。
そして、BGMもこのシーンにはありません。
BGMも背景に映る物も一切無くして、画面の中に映るアダムとスカヨハの二人に観ている人の意識を集中させるような演出だと思います。
そこで見せられる二人の口喧嘩の迫力は更に引き立てられているように感じました。
この演出こそ崩壊する家族を描いた映画「イカとクジラ」の監督であるノア・バームバックの手腕であると唸らされます。
演出面はさておいて、
この二人が必死になってお互いを傷つけ合い、汚い言葉で罵り合う姿が描かれます。
そこでかつて愛し合っていたはずの二人のことを考えると破綻してしまった関係への悲しみが観ている人の心に突き刺さるでしょう。
監督から「これが離婚するということだ」と突きつけられるようなこの喧嘩シーンはメッセージが詰め込まれているような気がして、この映画を象徴するシーンだになっていると思います。
③ 離婚騒動を通してやっと見つけた二人の愛
まだ離婚騒動が大きな争いになっていなかった頃。
この映画はお互いがお互いのいい部分を手紙にまとめて朗読するというシーンから始まります。しかし、手紙が読まれることはありませんでした。
その時にはまだ、すれ違いがあって離婚の話になっているもののまだ本格的な決定が下されているわけではありませんでした。
そこからどんどん悪化していく二人の争いがすれ違いをもっと深くしていってしまうまでは修復の余地があったということです。
セラピストが間に立って話していた二人が、やがて弁護士が間に立って話を進めることとなり、関係は修復できなくなるほどに悪化していきます。
だけど、二人が綴った手紙の中には本心から想う相手のいい部分が書いてありました。
その時に見えていたのに、見えなくなってしまったお互いのいい部分。
お互いの“いい部分”をもう一度見つけることができるのか?
そこがこの映画のストーリーの最大の見どころであり、監督が私達に伝えたかったメッセージなんだと思いました。
この物語は離婚というテーマを取り扱った悲劇です。
そこでお互いを突き放して引き裂かれていく二人を描いています。
だけど、引き裂かれていく二人の中の大切な“繋がり”を描いているようにも感じました。
この映画を観終わったとき、
その大切な繋がりの存在の前に、私は結婚も離婚もしたことがありませんが、人に寄り添いたくなる不思議な感覚になりました。
離婚や夫婦の問題を経験した人が見ると、もっとこの二人に共感できて涙が止まらないかもしれません。
それほどまでに大切なことを教えてくれるこの作品はNetflix制作の映画の中でもずば抜けた傑作の一つであることは間違いないと思います。
おわりに
ネットフリックス制作というネット発信の映画が、アカデミー賞もゴールデングローブ賞も騒がし始めましたね。
今まではアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA」、ティモシー・シャラメ主演「キング」、ウィル・スミス主演「ブライト」、コーエン兄弟の「バスターのバラード」
そして、マーティン・スコセッシ監督の「アイリッシュマン」など。
動画配信サービスの枠を超えて、今最も監督の作りたい映画を実現させてくれる制作会社としての顔も持つネトフリの快進撃はこれからも加速していきそうな気がします。
前年のアカデミー賞で「ROMA」が評価されたときと思い返してみると、たしかに素晴らしい映画ではあるものの少し芸術性が尖った作品だったと思っていました。
「Netflixだから特殊な映画なのかな〜」とか思っていましたが、今回の「マリッジ・ストーリー」で完全にネトフリのイメージが覆されました!
私は映画館で観ても何度も観に行きたくなるくらいこの映画が素晴らしい作品だったと思います。
そんな良作がテレビでもiPhoneでもパソコンでも何度でもアプリで観れるというところから純粋に「Netflixやべーーーー!!!」と思いました!
これからも全映画界に大きな影響を与え続けるネットフリックスからは目が離せませんね!!!
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作品ポスター・画像 (C)Heyday Films, Netflix マリッジストーリー